派遣・契約社員も退職代行で辞められる|契約期間中の壁と例外

「派遣だから」「契約社員だから」、退職代行を使っても辞められない——そう思い込んで、申し込みフォームをそっと閉じた人へ。

先に結論を書く。派遣社員も契約社員も、退職代行で辞められる。ただし、正社員とはルールの入口が少しだけ違う。あなたが結んでいるのが「期間の定めのある契約(有期雇用)」なら、辞めるための法律のドアが、正社員とは別の場所についているだけだ。その開け方を知らないまま、「契約期間が残っているから無理」と自分で結論を出してしまう人が、驚くほど多い。

この記事は、「誰でも今すぐ辞められます」と安請け合いするものではない。有期雇用には、契約の途中だと確かに辞めにくい場面がある。だからこそ、どんなときに辞められて、どんなときに引き止められうるのか、その線引きを条文に沿って整理していく。読み終えるころには、自分の契約書のどこを見ればいいのかが分かるはずだ。

「契約が残ってるから、まだ無理だよね」と求人サイトを閉じる夜

更新の時期が、また近づいてくる。

本当はもう限界なのに、頭の中では別の声がする。「次の更新まであと2ヶ月、それまで我慢すれば角を立てずに終われる」「契約の途中で抜けたら、派遣会社にもう紹介してもらえなくなるかもしれない」。そうやって、辞めたい気持ちと「契約期間」という四文字のあいだで、毎晩のように足踏みをしている。

派遣や契約社員のつらさは、不安が二重になっているところにある。正社員なら、向き合う相手は今いる会社ひとつだ。けれど派遣のあなたには、実際に働いている派遣先と、雇用契約を結んでいる派遣元という、二つの顔がある。どちらに、どう切り出せばいいのか。片方に言えば、もう片方から何か言われるのではないか。考えるほど、口が重くなる。

そこに、もうひとつの声が重なる。「正社員ですらないのに、退職代行なんて大げさだろうか」。——この一行に胸が小さく動いた人は、検索窓を開いては閉じる、その動作を何度くり返してきただろうか。きっと、数えていないはずだ。

はっきり言っておく。雇用の形が有期だろうと無期だろうと、「これ以上は続けられない」という限界に、正社員もパートも派遣も契約社員も区別はない。大げさかどうかを決めるのは契約書ではなく、あなたの心と体のほうだ。

派遣・契約社員の「辞める権利」は、正社員とどこが違うのか

まず、いちばんの誤解をほどいておく。「有期雇用は契約期間中、絶対に辞められない」というのは、半分だけ本当で、半分は思い込みだ。

正社員のような期間の定めのない雇用(無期雇用)なら、民法627条1項により、退職を申し入れてから2週間が過ぎれば、会社の許可がなくても契約は終わる。理由も同意もいらない。これが「退職の自由」と呼ばれるものだ。

ところが、派遣社員や契約社員の多くは「期間の定めのある契約(有期雇用)」を結んでいる。この場合、原則として、契約期間の途中で一方的に辞めることは想定されていない。「3ヶ月契約」「半年更新」といった約束を、お互いが守る前提になっているからだ。ここまでだけ読むと、「やっぱり無理じゃないか」と感じるかもしれない。

だが、原則には抜け道が用意されている。しかも、ひとつではない。有期雇用でも契約の途中で辞められる道は、大きく三つある(厚生労働省・有期労働契約のルール連合・有期労働契約の中途解除Q&A)。

ひとつめは、民法628条が定める「やむを得ない事由」がある場合。これがあれば、契約期間の途中であっても、直ちに契約を解除できる。何が「やむを得ない」にあたるかは次の章で詳しく見る。

ふたつめは、労働基準法の附則137条という、あまり知られていない規定だ。契約期間が1年を超える有期契約を結んでいる人は、契約の初日から1年が過ぎた日以後なら、申し出るだけでいつでも辞められる。これは民法628条の「やむを得ない事由」がなくても使える(専門的な知識を持つ人や満60歳以上の人、特定の事業の完了までと期間が定められた人などは対象外)。3年契約や5年契約で「あと何年も残っている」と絶望していた人にとって、ここは効く。

みっつめは、そもそも契約書や就業規則に「中途退職する場合は何日前に申し出る」といった定めがあるケース。その条件を満たせば、それに沿って辞められる。意外と、自分の契約書を最後まで読んだことがない人は多い。

気づいてほしいのは、「契約期間」は鉄の檻ではない、ということだ。それは、いくつも穴のあいた網に近い。穴の場所を知らなければ閉じ込められたままだが、知ってさえいれば、出口はちゃんとある。

「やむを得ない事由」は、どこまで認められるのか

三つの道のうち、多くの人が使うことになるのが、民法628条の「やむを得ない事由」だ。ここが曖昧だと不安が残るので、具体的に整理しておく。

やむを得ない事由として認められやすいのは、たとえば次のようなものだ。本人の病気やケガで働き続けるのが難しい場合。妊娠・出産。家族の介護が必要になった場合。職場でのハラスメント。給料の未払いや、大幅な賃金カット。契約で聞いていた仕事内容と、実際の業務がまるで違った場合。——どれも、「あなたの努力ではどうにもならない事情」という共通点がある(連合・有期労働契約の中途解除Q&A)。

ここは正直に書く。逆に、「上司と性格が合わない」「もっと条件のいい仕事が見つかった」という理由だけでは、やむを得ない事由として弱いと判断される場合がある。「派遣や契約社員も誰でも今すぐ辞められる」と言い切る情報は、世の中にあふれている。けれど、有期契約の途中で辞めるという話に限っては、そこまで単純ではない。安心させたいがために線を引かないのは、かえって不親切だと私は思う。

そして、お金の話を避けてはいけない。民法628条には続きがあって、やむを得ない事由が「労働者の過失」によって生じた場合は、労働者が会社に損害賠償の責任を負うことがある。逆に、過失によるものでなければ、賠償義務は負わない(連合・有期労働契約の中途解除Q&A)。条文だけ見ると、この「損害賠償」の三文字がまた怖くなる。

だが、現実を冷静に見てほしい。まじめに働いてきた派遣・契約社員が、体調や家庭の事情で辞めただけで、実際に損害賠償を取られるケースは、ごくまれだ。会社が賠償を勝ち取るには、あなたの過失で現実の損害が出て、その因果関係まで立証しなければならない。脅し文句として「賠償するぞ」と口にするのは一瞬でも、それを裁判で通すのは別次元の話だ。このあたりの仕組みは退職代行で損害賠償は請求される?脅し文句との見分け方で詳しく分解しているので、賠償という言葉に夜を奪われている人は、そちらも読んでおくといい。

ここに、この記事でいちばん持ち帰ってほしい発見がある。あなたが「もう続けられない、これはやむを得ない」と感じているなら、その感覚は、たいてい法律上も検討に値する。心と体が限界だと言っているとき、それを「ただのわがまま」と切り捨てているのは、たいてい会社ではなく、あなた自身だ。

派遣ならではの落とし穴——「派遣元」に、ちゃんと届いているか

契約社員と違って、派遣社員には独特の構造がある。ここを取り違えると、せっかく動いても辞める手続きが進まない。

派遣には、二つの会社が登場する。ひとつは、あなたが毎日通って実際に働いている「派遣先」。もうひとつは、あなたと雇用契約を結んでいる「派遣元(派遣会社)」だ。給料を払い、社会保険を手続きし、あなたを雇っているのは、派遣元のほうである。だから、辞めるという話の相手は、原則として派遣元になる。

ここに落とし穴がある。つらさのいちばん近くにあるのは派遣先だから、つい派遣先の上司にだけ「辞めます」と伝えてしまう。けれど、雇用主である派遣元に正式に意思が届いていなければ、退職の手続きは前に進まない。退職代行を使う場合も同じで、連絡を入れるべき本丸は派遣元だ。この一点を押さえているかどうかで、話の通りやすさが変わる(ベンナビ労働問題・派遣社員と退職代行)。

もうひとつ、多くの人が黙って抱えている不安がある。「契約途中で辞めたら、同じ派遣会社からもう仕事を紹介してもらえないのでは」というものだ。正直に言う。その可能性は、ゼロではない。気まずさが残り、次の紹介が来にくくなることは、現実としてありうる。

けれど、ここで一度問い直してほしい。「次の紹介が来にくくなるかもしれない」という不確かなリスクは、心や体を削りながら契約満了まで我慢し続ける理由として、本当に釣り合っているだろうか。派遣会社は世の中に一社ではない。あなたを大切にしない取引先や、限界の合図を無視する職場に、義理を尽くす必要はない。

そして見落とされがちだが、派遣社員にも有給休暇はある。同じ派遣元で6ヶ月以上働き、所定労働日の8割以上出勤していれば、有給は発生している。辞めると決めたら、残った有給をどう使うかも併せて考えたい。有給の扱いについては退職時の有給消化は「権利」だけど、使い方には順番があるに整理がある。

どのタイプの退職代行なら、有期契約に対応できるのか

ここまでで分かったとおり、派遣・契約社員の退職は、正社員より少しだけ込み入っている。「やむを得ない事由」を主張する必要があったり、派遣元が「契約期間が残っている」と渋ったりする場面があるからだ。だからこそ、どの退職代行を選ぶかが、正社員のとき以上に効いてくる。

退職代行には、運営元によって民間企業型・労働組合型・弁護士型の三つがある。有期契約への向き不向きは、ここで大きく分かれる。

民間企業型は、退職の意思を会社に「伝える」ところまでが基本だ。料金は手頃なことが多い。ただし、会社と条件を交渉する権限はない。むしろ交渉まで踏み込むと、弁護士法72条が禁じる非弁行為のリスクが出る。派遣元が「契約期間中だから認められない」と渋ったとき、民間型では押し返せず、「あとはご自身で会社とやり取りしてください」となってしまう場面が、実際に起きている。

労働組合型は、団体交渉権を持っている。だから、有給の消化や退職日について、会社と交渉ができる。費用と対応範囲のバランスが取りやすい選択肢だ。

弁護士型は、法的な代理人として動ける。やむを得ない事由の主張、派遣元との交渉、そして万一「損害賠償だ」と持ち出されたときの対応まで、まとめて預けられる。三つのタイプの違いは退職代行会社の選び方|民間・労働組合・弁護士型の違いと見分け方で詳しく整理しているので、迷う人は先にそちらを読んでほしい。

判断の軸は、そう難しくない。揉める要素がとくに思い当たらず、ただ静かに辞めたいだけなら、一般向けで価格と安心のバランスが取りやすい退職代行Jobsのようなサービスで十分なことが多い。一方、契約のまだ早い時期で辞めたい、派遣元が渋りそう、やむを得ない事由をきちんと主張する必要がある、あるいは賃金の未払いがある——こうした火種が一つでもあるなら、弁護士法人みやびのような弁護士が運営する窓口を、「保険」として検討する理由になる。法的なやり取りごと預けられる安心は、有期契約の人にとって、正社員以上に意味を持つ。

無理に契約する必要はない。まず公式サイトで条件と料金を確かめ、自分の状況に合うかどうかを見てから決めればいい。

ありがちな失敗と、その避け方

最後に、派遣・契約社員が退職代行でつまずきやすいポイントを、先回りして潰しておく。

ひとつめは、入社してすぐの「即日で辞めたい」依頼だ。働き始めて数日というタイミングでは、やむを得ない事由がよほど明確でない限り、契約途中の解除は通りにくい。また、1年を超える契約で附則137条を使う場合は、初日から1年が経つのを待つ必要がある場面もある。即日退職そのものの仕組みは退職代行ですぐ・即日辞める方法で整理しているが、有期契約では「即日」のハードルが正社員より少し上がる、と覚えておきたい。

ふたつめは、交渉が必要そうなのに民間型を選んでしまうこと。派遣元が渋る見込みがあるなら、最初から労働組合型か弁護士型を選ぶほうが、結局は早くて確実だ。安さだけで選ぶと、肝心の場面で動けない。

みっつめは、先ほど触れた、派遣先にだけ伝えて派遣元に届いていないパターン。退職代行に依頼するなら、連絡先として派遣元の情報を正確に伝える。これだけで、手続きの空回りを防げる。

よっつめは、有給を確認しないまま辞めてしまうこと。発生しているはずの有給を、気づかずに捨ててしまうのは、もったいない。辞めると決めたら、残日数の確認はワンセットだ。

どれも、知ってさえいれば避けられる。失敗の多くは、能力ではなく、情報の有無で決まる。

一行だけ、送ってみる

ここまで読んで、「自分の場合はどうなんだろう」と、まだ判断がつかない人もいるはずだ。それでいい。有期契約は、契約の種類や残り期間、辞めたい理由によって、答えが変わる。だからこそ、ひとりで抱え込んで結論を急がないでほしい。

自分がどのタイプの退職代行に向いているか迷うなら、退職に迷ったときの相談窓口・選び方のページから、30秒の質問に答えるだけで、合いそうなタイプを絞り込める。いきなり契約しなくていい。「派遣で、契約があと数ヶ月残っているけれど辞めたい」——そんな一行を送って、相談だけで止めることもできる。動かないまま次の更新を迎えるより、ずっと軽くなるはずだ。

まとめ

派遣社員も契約社員も、退職代行で辞められる。正社員と違うのは、辞めるための入口が「契約期間」という条件をくぐる点だけだ。民法628条の「やむを得ない事由」、労働基準法附則137条の「1年経過後はいつでも」、そして契約書の定め——出口は一つではない。

「契約が残っているから無理」は、たいてい思い込みだ。あなたが本当に限界なら、その事情は法律上も検討に値することが多い。派遣なら派遣元に意思を届けること、揉めそうなら最初から交渉できるタイプを選ぶこと、有給を確認すること。押さえるべき点は、もう出そろっている。

雇用の形が有期であることは、我慢し続ける理由にはならない。契約書の四文字に、これ以上あなたの時間を縛らせなくていい。

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